東京高等裁判所 昭和58年(ラ)355号 決定
記録によれば、(一)本件の売却物件である建物(東京都中野区江古田四丁目一七三八番地一一所在、家屋番号一七三八番一一の三、木造亜鉛メッキ鋼板葺二階建居宅、床面積一階三四・六六平方メートル、二階二九・七〇平方メートル。以下「本件建物」という。)は、もと亡金須ミよき(昭和五一年二月一六日死亡)の所有であり、その敷地(同所一七三八番一一の宅地三〇四・一〇平方メートルの一部)も、もとミよきが国から賃借していたものであること、(二)ミよきの相続人は債務者金須正幸とその兄の金須文徳の二人であったが、右両名の間で昭和五四年五月三一日に成立した遺産分割協議においては、本件建物等とともに右土地賃借権も遺産分割の対象とされ、その結果本件建物及び右土地賃借権は文徳が取得することになったこと、(三)しかしながら、その後本件建物所有権の取得につき文徳が対抗要件を具えるのを怠っている間に、抗告人は、正幸の本件建物の二分の一の共有持分につき仮差押をし、更に正幸に対する債務名義に基づいて本件競売申立をして右共有持分を差し押えたこと、(四)他方、右三〇四・一〇平方メートルの土地については右遺産分割協議に先立つ昭和五二年一月一日に死亡したミよきの名義を用い大蔵省との間で期間を二〇年とする賃貸借契約が更新されていたところ、文徳は昭和五四年一一月六日右賃借権の承継人として改めて関東財務局新宿出張所長との間で残期間につき右土地を賃借する旨の同日付の国有財産有償貸付契約書(同所長の公印の押捺あるもの)を作成したこと、(五)抗告人が本件建物につき代位による保存登記を経たうえ正幸の共有持分に対する仮差押の登記を受けたのは昭和五五年九月二六日であること、以上の事実が認められる。
以上の事実関係によれば、前記三〇四・一〇平方メートルの土地の賃借権については、抗告人が本件建物に対し仮差押をする以前に、確定日付ある証書をもって、遺産分割に基づき賃借権全部を文徳に帰属せしめることが賃貸借当事者間で合意されたものというべきである。そうすると、一般に、建物に対する差押の効力は建物の従物としての敷地の賃借権に及ぶといいうるとしても、本件においては抗告人が本件建物に対し仮差押をした当時既に正幸はその敷地について賃借権を有しなくなっていたものであるから、右仮差押及びその後に抗告人のした差押の効力を右敷地賃借権に及ぼすことはできないものといわなければならない。
(鈴木 下郡山 加茂)